左官屋の代表的な道具と言えば『コテ』でしょう。
日本の左官鏝(コテ)は、世界的にみても種類が多く、多彩な仕上げができることが特徴です。
使う材料や場所の大きさに合わせてコテを使い分ける繊細な手仕事なので種類も多くなってます。
そして、材質や焼き付け、有名なメイカーなどにより
コテの値段はピンからキリまであります。

日本の左官の歴史は、奈良時代からと続く伝統的な仕事です。
それゆえ、コテの種類も1,000種類あります。
- モルタルなどを塗るための塗りゴテ
- 補修材など薄塗り用の角ゴテ
- デザイン的な左官仕上げをするくしコテ
- 土間などの広い床に使う土間ゴテ
- 細いところや障害物の裏側を塗るための張通しゴテ(はりとおし)
- 出隅をきれいに整えるための面ゴテ(種類も豊富)
- 入隅をきれいに整えるための切付けコテ



コテは、名詞の後につくと~ゴテと変化します。
- コテの値段の差が大きい理由
- 左官のコテの種類
- 左官で使われる道具
- DIY用に初心者が最初に購入すると良い道具
この記事は、左官歴30年の左官職人が書いてます。
筆者は、左官1級技能士にして基幹技能士です。
大手ゼネコンの1級職長でもあります。


コテの値段について


コテの価格差は「仕上がりの美しさ」
と「道具としての寿命」の違い



一見同じように見える左官のコテですが、値段の差には明確な3つの理由があります。
素材と強さ(折れにくさ)
⭕高いコテ(本焼きなど)
高級な刃物と同じ質の高い鋼を使い、強く「焼き入れ」されています。
そのため、非常に薄くても硬く、折れにくいのが特徴です。
❌安いコテ
柔らかい素材で作られているため、無理な力がかかると曲がったり傷ついたりしやすいです。
コテ作成の鍛冶職人の技術
熟練の職人は、「薄さ」と「弾力」を絶妙なバランスで両立させることができます。



この技術で作られたコテは、壁の凹凸に合わせて力が均等に伝わるため、仕上がりが格段に美しくなります。
この技術を持つコテ作成の鍛冶職人は、年々減少しています。
そのために、高品質なコテの値段は値上がりしてます。
耐久性(コストパフォーマンス)
- プロ仕様(数千円以上):
壊れにくく曲がらない設計で、すり減るまで長期間使えます。 - 格安品:
数回の使用で壊れたり、一度曲がると戻らなかったりと、買い替え頻度が高くなりがちです。
コテの値段は包丁と同じと考えよう



100円ショップの包丁と、名工が鍛えた高級包丁の違いと同じです。
100円ショップの包丁も「切る」ことはできますが、すぐに切れ味が落ち、研いでも長くは持ちません。
一方で、名工が鍛えた高級な包丁は、素材が良く、切る時の力加減が絶妙に伝わり、手入れをすれば一生モノの道具になります。
左官のコテも、「仕上がりの美しさ」と「道具としての信頼性」を買うと考えれば、その価格差の理由が見えてくるはずです。



ただし、DIY初心者には薄くて柔らかいコテの方が使いやすいので、無理に高価なコテを購入する必要はありません。
コテの種類



左官職人の最も重要な道具であるコテは、使用する鋼材の材質や焼入れの強さによって、硬さが分類されています。
近年では、伝統的な鋼材以外にステンレス製のものも使われています。
ステンレス製はさびないため近年人気ですが、お値段も高めです。
鋼材によるコテの材質と硬さについて詳しい内容はこちら
コテの基本的な材質は鋼材で、「焼入れの強さ」によって主に4種類に分けられ、それぞれ硬さが異なります。


鋼材によるコテの材質と硬さ
- 地金(Jigane)
一番柔らかい素材です。
焼き入れしていない状態。
表面が荒れており、目に見えない凹凸があるため、セメント系のモルタルのように滑りやすい左官材料を扱うのに適しています。ただし、柔らかいため表面が傷つきやすく、薄く作ることが難しく、初心者が力を加えると曲がりやすい傾向があります。 - 半焼き(Han-yaki)
地金に次いで柔らかいです。
角ゴテなどでは、硬すぎず曲がりにくいので使い勝手がよく左官職人でも人気の焼きです。 - 油焼き(Abura-yaki)
硬めでコテはしなりません。
一般的に青みがかった色がつけられています。
焼き入れが強いため、薄いコテを作ることが可能で、薄いコテは弾力があります。
大きさが小さいものは、初心者にとっても使いやすいです。 - 本焼き(Hon-yaki)
一番硬い素材
刃物と同じ鋼が使われており、非常に質の良い鋼(鉋のブレードと同等)が使われています。
表面が滑らかなため、モルタルのような滑りやすい材料を扱うのは難しいです。
特殊な形状のコテはほとんどが本焼きです。
ステンレス製のコテ
ステンレス製のコテは歴史的に新しい素材であり、非常に使いやすいです。
• 特徴と用途:
硬い素材で、なめらかな表面と適度な弾力を持ちます。
大抵の場合、仕上げ用に使われます。
油焼きのコテよりもさらに薄く作ることが可能です。
また、GLボンドなどの石膏系の材料を使う場合は、錆びないステンレス製のコテを使います。



左官作業では、左官材料と作業工程によってコテの硬さを使い分けます。
下地が均一な状態でない時もしくは塗りしろが5mm以上ある時は、下こすりが必要です。
仕上げへと進む過程で、下こすり→中塗りと
仕上げるために塗り厚を均一にします。
下こすりや中塗りに使用される材料は、
粒子の荒いものが多いです。
本焼きなどの硬いコテでこて圧をかけて塗りましょう。
仕上げに向かうにつれて、使用する材料の粒子は細かいものになり、粘りが出てきます。
この粘りのある材料を均す際には、薄いコテを使うと、コテ波が付きにくくなります。
仕上げる材料の種類によって硬いコテか柔らかいコテか変わります。
コテの模様をつける時や櫛引する時はその仕上げに合ったコテを使います。
塗りゴテ





モルタルなど骨材の荒い厚塗りの材料を塗るために使うコテです。
塗りゴテは、大きさが様々で塗り付ける場所に合わせて選択します。
一番よく使われる大きさは、24㎝(8寸)~30㎝(尺)と言われてます。
個人的な意見ですが、27㎝(9寸)~28.5(9寸5分)こて圧をかけて塗りやすい大きさです。
初心者には、18~21cmの小さなコテをお勧めします。
角ゴテ



マンションなど外壁吹き付け下地や部屋内のクロス下地では、一番使われるコテです。


現在、野丁場の左官職人が一番使うコテは、角ゴテです。
モルタルなど厚塗りは減少傾向にあります。
補修材と呼ばれる薄塗りで下地を仕上げる仕事が最も多い仕事といえます。
薄塗りの補修手順紹介
吹き付け・クロス下地
抑えゴテとよばれる小さな塗りコテで
型枠をとめるためにできた穴(Pコン)を埋めます。
コンクリートの不陸(凸凹)やバリ(木くず)・脆弱部分の研磨作業をします。



回転系の電動工具による研磨作業は、ホコリが凄いうえケガがしやすいので不人気な仕事です。
コンパネの打ち継ぎや凹凸の凹み部分を#20番や#30番と呼ばれる3~10mmまで塗れる補修材で塗ります。
⚠️補修する前に、プライマー(ハイフレックスなどの下地調整剤)を塗布します。
この時は大きめの硬い油焼きの角ゴテを推奨します。
これは、予算と仕上げによって塗る回数が変わります。(会社の方針により差があります)
ペンキ下地の場合は、#20番の補修材を全面塗り→#10番を1~2回塗ります。
吹き付け下地やクロス下地は、
#20番を塗ったり塗らなかったりします。
これは躯体の精度によります。
#10番は1~3mmの材料で厚くは塗れませんが肌がきれいに仕上がります。
木ゴテ(プラごて)





木コテは、不陸(凸凹)をなくし平滑にするために使います。
また、骨材を転がして模様をつける時にも使われます。



木鏝は、材料を引っ張りにくいので土間の均しや
金鏝仕上げ前にも使います。
初心者が、土間を仕上げるならおすすめのコテといえます。
土間ゴテ





土間の専門家「土間屋さん」が使う大きなコテです。
硬いタイプと柔らかいタイプと2種類あります。



この動画で左官屋さんが使っているのが、頭が丸い硬い土間コテです。
外構屋さんが、使っているのは角の柔らかいタイプのコテです。
動画のようにコンクリートで押さえに入るまでには、
カッパぎで荒く均して、アルミトンボできれいに均します。
その後、プロペラ(エンジン機械)で木鏝をかけてから仕上げ押さえをします。
町場の駐車場や狭い場所では木鏝なしで押さえることも多いです


くしコテ





ジョリパット仕上げや珪藻土仕上げの校倉造りや櫛引しあげで使います。
熊手のような竹くしを使うこともあります。
通しゴテ(押さえゴテ)





大津通し 一般的に仕上鏝、押え鏝、通し鏝とも呼ばれています。
初心者には一番使いやすいコテです。
初心者には、少ししなりがある半焼きのコテがおすすめです。
漆喰など薄く柔らかい材料を塗るならば、アロラインや薄いプラごても悪くありません。


ちなみに、「張通しゴテ」というこてもあります。
こちらのコテは、配管などの手が入らない場所を塗るのに便利な形をした特殊なコテです。
面引きゴテ







出隅(ですみ)と呼ばれる凸角の仕上げや躯体整形の使われます。
出隅(ですみ)は、種類があります。
✅ピン角と呼ばれる直角のもの
✅角が少し丸いもの
✅角が面と呼ばれる10~30ミリの面になっているもの
それぞれの大きさや角度にあうコテがあるのです。
面の大きさを自在に調整できる面コテもあります。
初心者向けは、これがイチオシです。
切付けゴテ





入隅(いりずみ)と呼ばれる凹部をきれいに押える道具です。
初心者には難しいので、施工日をずらして入隅を塗ることをおすすめします。
日にちに余裕がない人には、ステンレス製の薄手の柔らかいコテをおすすめします。
目地ゴテ



DIY初心者には、最初は購入不要なコテです。





目地とは、材料と材料の間の「隙間(すきま)」や「継ぎ目(つぎめ)」のことです。
目地コテは、目地材を押さえてきれいにするだけではなく
普通のコテが入らない場所を、削ったり塗ったりすることにも使います。
その他の特殊なコテ



正直に言うとDIY初心者には不要のコテです。





狭い場所を塗るために握りからコテまでの距離が特殊なコテもあります。
このように、細かいコテをたくさん使うのは日本ならではです。
コテ以外の左官道具



コテ以外にも、左官の材料を練るための道具や材料をコテにのせるためのコテ板、段取りするための道具なども必要です。
コテ板(手板)





コテを持たない方の手で、材料を乗せるためにつかいます。
コテに材料を載せるのが「コテ返し」といって初心者には最初の難関になります。
ヒシャク・レンガコテ
バケツなどの中から材料をすくいとるための道具です。





柔らかい材料を使うならヒシャクがおすすめです。
材料を練るのにも使えます。
初心者は、使いやすいレンガコテをおすすめします。
DIY初心者向けの道具


DIYで左官に挑戦するならば、ホームセンターやネットで購入しましょう。
何を塗るかによりますが、18cm程度のコテがおすすめです。
バケツとレンガコテ、コテ板はマストです。
予算に余裕があるならば、さびないステンレス製をおすすめします。
養生テープ、チリはけは必要があれば購入しましょう。
珪藻土なら、柔らかいコテがいいですよ。
硬いコテと柔らかいコテを1つずつ購入して使い分けるといいですよ。



あなたのDIYの目的によって購入するべきコテは変わります。
下の動画がわかりやすいので参考にしてください。





初心者向けの切付け(入隅・出隅)のお得なコテはこちら
このコテは、便利ですが、壊れやすいので本職の人にはお勧めできません。
(おまけ)DIY初心者向け
左官の「コテ返し」のコツを解説





図解は、AIが描くのですが「日本のコテ」と「コテ板」はなかなか理解してもらえません。
②の絵では、コテの裏に材料がのりません。
⚠️図解の絵は参考程度にしてください。
左官コテを利き手に持ち、反対の手でコテ板を持ちます。
コテ板に材料を乗せ、コテの縁で材料を切るようにしたら、
コテ板を立て、コテを持っている方の手首をひねって
コテの腹を上向きにするようにして、こてに材料を乗せます。
これをコテ返しといいます。
材料の乗った縁の方を壁に押し当て、少しずつコテを寝かせながら
【コテの角度を鋭角にすること】下から上へコテを滑らせて材料を塗りつけていきます。



あまり一度に材料をつけすぎないようにしましょう。
コテの真ん中で材料を薄くのばすイメージです。
初心者向けアドバイス
壁のぬりかた





塗り方や材料のつけ方のDIYでの基本は、ペンキも左官も同じです。
イメージは、パンにバターを塗るイメージです。
一度に厚く塗ると剥離(はくり)する恐れがあります。
力を入れて均一に塗ることを意識しましょう。
基本的に壁は上から利き手の反対側から塗ります。
初心者は、塗る場所の角周りを先に塗りましょう。
余分な材料は、中央に伸ばすと角の材料が決めやすいです。
最期に中央のスペースの面積を考えて適量の材料を塗りましょう。
足すのは簡単ですが、材料が多いと削り取るのは難しいです。
材料が多すぎるとコテ波はなかなか消えません。










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